間違いと思う部分はあるんだけど、どのように修正するかを検討中2025年1月1日
投資の簿記的表現、資本財生産企業の企業利潤が含まれていないので修正したい 2025年7月21日
自分の理解を書く。間違いの指摘や質問などはコメントしてほしい。
まえがき
経済学用語としての「投資」と「貯蓄」の基本的な?よく教えられている?知識としては
- 投資と貯蓄は国内民間部門に着目した変数。公的固定資本形成や海外の資本形成は対象としない
- GDP支出面=消費+投資+政府支出+純輸出
- GDP分配面=消費+貯蓄+税
- 資本減耗は、経済学用語でいうところの貯蓄や投資とは関係ない
などといったところ。ただ、どうも実態がつかみづらい。私の場合、これだけで分かったような気になれないのだ。
「投資」と「貯蓄」の意味を、経済活動の記述方法として優れたツールである複式簿記のアイデアを借り、理解してみたい。具体的には以下のような感じ。
投資について
まずは、投資とは何かについて。単純に書くためにかなり前提を含むんだけど、企業が行う投資は、

これに企業利潤を追加。付加価値の生産には、賃金や税のような費用に加え、企業の利潤も含まれる。
投資活動に関連した労働の賃金や借入金の利払いや所得税の支払いなどの費用が、資本の取得原価を構成する。(棚卸資産も含めた意味で資本と呼ぶことにする。いちいち列挙するのが面倒なので。)
投資は資本の取得原価(から関連の輸入を引いたもの)でもあり。材料を外国から輸入する場合、材料費
として資本の取得原価が
。投資は
が該当する。
貯蓄は、家計に支払われる賃金等(分配)と銀行に支払われる利払い
(分配)の和
が該当する。政府への分配
や海外への分配
は国内民間部門が対象の貯蓄に含まれない。
投資と貯蓄が”均衡”していないじゃないか、と言われそうだが、これに関しては、投資に伴って民間から流出した金額、すなわち①税や公共料金や②関連の輸入が関係している。
①税や公共料金で空いた穴をちょうど埋めるような一般政府の支出と、②関連の輸入を打ち消す分の輸出がなされているとき、これを"均衡"と呼んでいるということだと思う。どちらにしても、貯蓄と投資は、恒等的に投資と貯蓄が一致するモノでもなければ、常に均衡するモノでもない。
貯蓄について
続いて投資とセットで語られがちな貯蓄について。単純に書くためにかなり前提を含むんだけど、
貯蓄が変化する経済活動についてまとめるとこう。資産と負債の増減は水色で塗っている

所得移転の話をしている下の4行は削除

貯蓄の増減の列の修正
「貯蓄」=「国内民間所有の資本の増減」+「生産活動に伴う国内民間部門の純金融資産」
で計算している。「投資活動の結果として民間部門が生産した付加価値」と「生産活動に伴う民間部門の純金融資産の増加」の和とも言える。貯蓄の意味と言って良いはず。(金額というスカラー量で表現されるものに対して付加価値という言葉を使う姿勢に釈然としない方、私も同じだ、怒らないで。)
貯蓄は所得移転や所得収支とは関係なく決まる。投資と貯蓄は、ともに国民経済計算のような生産活動に伴う変化の統計であり、土地や金融資産の売買のような生産に伴わない取引は、投資と貯蓄とは関係ない。
投資・貯蓄と収支の関係
ところで、GDPの支出面=GDPの分配面より、
「消費」+「投資」+「政府支出」+「純輸出」=「消費」+「貯蓄」+「税」
変形すると、
「貯蓄」ー「投資」=ー(「税」ー「政府支出」)+「純輸出」
純輸出は、またの名を貿易・サービス収支という。また、「財政収支」=「税」ー「政府支出」。
したがって
「貯蓄」ー「投資」=ー「財政収支」+「貿易・サービス収支」
投資と貯蓄は収支次第で一致しないこともある。「財政収支」=「貿易・サービス収支」の時は、投資と貯蓄は一致する。収支は固定資産の増減を測らず、資金の流れだけを測っている。貯蓄と投資が一致しないときはー「財政収支」+「貿易・サービス収支」≠0である。
ちなみに、両辺「所得収支」+「経常移転収支」を足すと、
「貯蓄」ー「投資」+「所得収支」+「経常移転収支」=ー「財政収支」+「貿易・サービス収支」+「所得収支」+「経常移転収支」
ここで右辺
ー「財政収支」+「貿易・サービス収支」+「所得収支」+「経常移転収支」
=ー「財政収支」+「経常収支」
=「民間部門収支」
だから、
「貯蓄」ー「投資」+「所得収支」+「経常移転収支」=「民間部門収支」
あとがき
前にも似たような試みをしようとしたことはあった。その時の副産物を一つ記事にして出したりもした。
rokabonatttsu.hatenablog.com
これを書いたときに断片的なアイデアに過ぎずまとまらなかったものを、今更になって出してみた次第。
経済を理解するために会計を知ろうとしないのは、料理を覚えたいのに包丁を使う練習をしないみたいなもんだと思っている。もちろん包丁がなくても作れる料理はたくさんある。けど「料理できる」と言うなら最低限包丁くらい使えなきゃいけない。そんな心持ち。
それにしても貯蓄って、意味が分かりにくい。思考が深まらない言葉遣いと世界のとらえ方をしている気がする。経済主体間の取引と、収支と、各種資産・負債・純資産の増減と、部門間の貸借関係の、4つを文法にして説明すれば、世の経理さんがやってるようなことを土台にして経済を語りやすくなるし、解像度を上げやすいはずだ。などと愚痴ってみる。