好奇心の横断歩道を創る!

自分の思考をラバーダック・デバッグするためのブログ

「取り付け騒ぎ→銀行の破綻」の簿記っぽい表現をメモ

 

前提とか

・資産の減少分を意味する項目は赤の字で記載しました。

・それぞれの貸借関係に固有の背景色を割り当てました。

・この記事では、簡単のために、ハイパワードマネーを現金と呼称しています。紙幣とか日銀当座預金とか。ハイパワードマネーとかマネタリーベースとかって言ってると長すぎるし、短かったとしてもあんまり専門家っぽい言い回ししたくないので。

取り付け騒ぎ という言葉を、ここでは、預金者が次々と現金を引き出そうとする騒動と定義します。現金ってところがミソ。

・簡単のために、銀行が最初負っている負債が預金のみということにします。そんなわけないんですけど、あくまでシンプルにするために。

・預金者の要求する引き出し金額を基準量1とします。金額が1ではない場合のみ(X)と書き添えます。(1)は省略するってこと。

 

手元の現金だけで足りる場合

資産に十分な現金が含まれていた場合。内容が正しいかどうか要確認

銀行の資産(1+α)の中に現金(>1)があれば、銀行は破綻しません(正確には、「破綻する必要に迫られません」)。すなわち、預金者の要求に応じて現金を提供できます。

資産には、実物資産や準備預金(日銀当座預金)や国債などの債券が含まれています。

 

破綻する場合

資産に一切の現金が含まれていなかった場合。内容が正しいかどうか要確認

銀行の資産の中に現金が不足していれば、銀行は現金不足によって破産します。時間1が実現できないわけです。

 

他所から現金を借りてしのぐ場合

現金を日銀を含む他銀行が限度額を設けずに貸し出す場合、銀行は取り付け騒ぎのときに破綻する必要はありません。いずれは返済しなくちゃいけなくなりますが。

足りない現金を他金融機関から借りる場合。内容が正しいかどうか要確認

 

金融資産を現金化してしのぐ場合

というか、銀行の保有する資産には現金化できる金融資産が十分に存在する場合がほとんどかもしれません。金融資産を市場で売って現金化し、それを使って現金の引き出しに応じる場合は以下のようになります。

足りない分、金融資産を現金化する場合。内容が正しいかどうか要確認

 

蛇足

確信のないことばかり書いていきます。それでもかまわないなら読んでくださいね。

 

銀行の経営陣が、現金の引き出しに応じる能力があるにもかかわらず「現金の引き出しに応じません」と宣言しても構わないかもしれません。法律には、私、疎くて。多分、求められたら現金引き出しに応じなければならないんじゃないかな。納税の義務とか絡んでくる案件だから、ここら辺は割と規制が厳しそうなイメージ。

 

日銀が現金を貸し出すだけで銀行の破綻が起こらなくなるなら、取り付け騒ぎにあって破綻する銀行なんてなくなるんじゃね?と思うかもしれません。それはそうなんですが、絶対にないとまで言えるかどうか、少し考えてみます。

まず、現金のうち預金者が受け取れるのは紙幣と、せいぜいコイン程度。預金発行額と比べるとかなり少ない(0.1倍程度のオーダーだったかな?)うえに、預金者が日銀に口座を持っていないので、結局のところ預金を紙幣やコインに交換できなくなる可能性は残されています。大規模な取り付け騒ぎに応じて現金の需要が高まると、日銀が渦中の銀行に現金を気前よく貸し付けたり金融市場に十分な現金を供給ない限り、すなわち、現金を必要とする銀行に、必要な金額の現金が供給されるようにしておかない限り、取り付け騒ぎの末に銀行が破綻する可能性はあります。現行の仕組みはよくできていますから、当局の機嫌次第で取り付け騒ぎはなくなる、といえるかもしれません。まぁ、大規模な取り付け騒ぎなんてのは少なくとも今の日本では起こりそうもないですから、政策の大転換が行われたり日本経済の様子がかなり大きく変わるくらいでないと、当局の機嫌そのものが取り付け騒ぎに与える影響は事実上無意味なままでしょうけれど。

金融政策の目標がマネタリーベースの総額の維持になって、しかもその水準が低くなって、当局が頑として政策目標の維持を続ける場合は、取り付け騒ぎが起こりやすそうですね(あくまで個人の感想です)。

 

そういえば、最近は日本でも本格的に電子マネーが普及し始めていて、現金を持っていなくてもなんだかんだ生きていけるみたいな感じかと思います。そもそも預金自体も事実上電子マネーみたいなものです。「現金引き出しはできないけど電子マネーならできる。大丈夫そうな銀行に振り込めば万事解決では?」と思う人もいるかもしれません。お金の流れを思い出してみましょう。ある銀行Xの預金がほかの金融機関に振り込まれた場合、預金や電子マネーは金融機関にとっては負債ですから、負債が増えた分、もともと負債を負っていた銀行Xは現金で請求を食らいます。銀行Xにとっては、現金の請求元が非金融機関の民間人から金融機関に移行しただけですね。現金を手に入れないといけないこと自体は変わらないわけです。現代日本では金融機関同士の決済がRTGS(即時グロス決済)だそうなので、銀行Xの現金が底をついた時点で振り込みができなくなるはずです。長々と書いてきましたが、要するに、「現金引き出しができないなら、電子マネーも振り込みも無理なんじゃない?」って話です。