示唆的な実験を見つけました。進化心理学者のウィリアム・ミューアの実験です。彼は、生産性に興味を持ち、ニワトリを用いた面白い実験を思いつきました。ニワトリは10羽ほどの集団で生活します。そこで、もっと沢山の卵を産むニワトリの集団をつくるのに効果的な方法を探るため、以下の2つの方法を比較したのです。
方法A (以下、エリート戦略と呼ぶことにする)
複数の集団から、各集団内で最もたくさんの卵を産むニワトリを選び、選ばれたニワトリたちの子孫で次世代の集団を複数つくる。以上を繰り返す。
方法B (以下、連帯戦略と呼ぶことにする)
複数の集団から、最もたくさんの卵を産む集団を選び、その集団を繁殖させ、次世代の集団を複数つくる。以上を繰り返す。
2つの方法で6世代にわたって選別を行い、どちらのニワトリの方が、より多くの卵を産むようになったのかを調べたわけです。その結果。
エリート戦略(方法A)で6世代選別したとき、ニワトリはたったの3羽になり、その他のニワトリは集団内の他の個体に殺されてしまいました。残った3羽もつつき合って喧嘩ばかり。羽がほとんど無くなる有様。卵の生産量は大きく下がってしまいました。
一方、連帯戦略(方法B)で選別したとき、6世代後のニワトリたちはどれも発育がよく、卵の生産性は大きく向上していました。
なぜこんなことになったのでしょうか。
実は、集団の中で最もたくさん卵を産むニワトリは、ほかのニワトリを攻撃して産卵を抑制することで、最もたくさんの卵を産むエリートになっていたのです。
ここまで読んでくださった感の良い方であれば、もしくは以前からこの実験を知っていた方であれば、「人間にもこの実験のエリート戦略みたいなことが起こる可能性があるのでは?」と思ったのではないでしょうか。
「チームのメンバーを攻撃・搾取することで、チーム内の地位や評価を得ている事例が多数あるのではないか?」と感じませんでしたか。
少なくとも私はそう直感したわけです。話はそれだけ。それだけで、人間社会への実用の基本的な方針は決まると思いますが、具体例や関連する情報源を下に列挙しておきます。最も貢献した者が最も評価されるわけではありません。
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