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複式簿記っぽく財政支出を説明。日本政府が未だに財政破綻しない理由について。

0,この記事の目的と注意点

 この記事は、国債発行を伴う財政支出の手順や結果を理解することを目的とします。国債を発行して財政支出するとは、具体的に何をしているのか、複式簿記っぽく図にしました。正確な勘定項目は知らないので便宜上の名称だと思ってください。自分が調べて解釈した範囲でつくったものです。大筋正しいはずです。

全ての図表や説明において、簡単のために

・債務者が同じ項目を同じ色で塗り

・手数料や金利の支払いなどは無視

・受注した企業の、生産活動に伴う資産の消耗を無視

・簡単のために、民間企業の活動の費用で、国営公営のサービスを使わないという仮定

しています。

編集用メモ1:民間企業に仕事を外注するタイプの財政支出しか考えていなかった。けど、公務員への支払いや、医療費の補助などは、小切手ではなくほかの方法が使われているはず。これらを追加して、幅広く網羅したい。

編集用メモ2:財政支出や徴税によって増減する準備預金を、国債の売買でどの程度吸収したり放出したりしているのかを調べなおす。政策金利(今は長期国債の利回りのコントロールイールドカーブ・コントロールらしい)

 

1,目次

 

 

2,国債発行しない場合の、財政支出と税金徴収

2-1,財政支出は民間の預金を増やす

 最初に、国債を発行しない場合の財政支出と税金徴収の説明です。まずは財政支出についてです。政府が民間企業に事業を発注し、代金を支払う場合を例にとるとこうなります。

図1.1:国債発行を伴わない財政支出

 ①政府から受注した企業だけの収益ではなく、その企業が原材料を購入した企業など、サプライチェーンの全ての民間企業をまとめて考えていること②簡単のために、民間企業の活動の費用で、国営公営のサービスを使わないという仮定していること に注意してください。

 財政支出は民間の預金を増やし、準備預金(政府預金口座)を減らしています。民間企業は儲かりました。儲かった人が消費を増やせば、他の誰かの収入も増えるというものです。

 年金を振り込むような場合でも、医療費などの補助の場合でも、決済の過程は異なれど結果は同じになります。(政府名義の小切手なんてものは使いませんし)

 民間銀行は預金を増やし、同額の、金利を受け取れない準備預金を増やしています。

 

 2-2,税金の徴収は民間の預金を減らす

 続いて税金の徴収についてです。

 税金は、一応、日銀の負債を収めなければならないことになっているようです(日銀の負債とは、非金融機関たる我々家計が使えるものに限定すると、現金(お札)だけだと思います。お札には日本銀行券って書いてあるでしょう?あれってバランスシート上では日銀にとっての負債です)。ただ、預金取扱期間たる民間銀行が日銀にとっての負債(お札や準備金など)と1:1で交換することを約束した負債、すなわち預金を、納税に使うこともできます。銀行が、政府や日銀と我々非金融機関の間を取り持って、預金を消す代わりに納税しといてくれるって感じです。

図1.2:税金の徴収

 ご存じの通り、徴税は民間の預金を減らします。これに対応して、政府の準備預金口座は残高を増やします。

 

 

3,国債発行を伴う財政支出のパターン

 次は国債発行を伴う財政支出を見ていきます。

3-1,国債発行を伴う財政支出の簿記的表現

 ①政府から受注した企業だけの収益ではなく、その企業が原材料を購入した企業など、サプライチェーンの全ての民間企業をまとめて考えていること②簡単のために、民間企業の活動の費用で、国営公営のサービスを使わないという仮定していること に注意してください。

3-1-1,政府短期証券を発行して支出した後、新規国債発行によって準備預金の貸付金利国債の利回りを維持

ここでは、政府が民間企業に事業を発注し、代金を支払う場合を例にとりますが、年金や医療費補助のような場合でも、結果は同じ形になります。

図2.1.1:政府短期証券の発行によって準備預金を調達して行う財政支出
3-1-2,政府短期証券を使わず、国債の売買で準備預金を調達

図2.1.2:国債の売買によって準備預金を調達して行う財政支出

 

3-2,財政支出は民間の預金を増やす。国債と関係なく。

 2-1,2-2を見ると、財政支出と収入(税金)が同額の場合、民間の預金は変化しません。財政支出の方が多い場合に、民間の預金が増えるのです。財政支出の方が多い時、国債市場における国債の利回りをコントロールしたいという理由で、新規国債発行や日銀による既発国債の売買が行われます。その辺はイールドカーブコントロールで検索。

 2-1,3-1ー1および3-1-2の結果から、財政支出は、新規貨幣発行して財政支出をしていると分かります。政府が財政支出すると、新規国債を発行しているかどうかにかかわらず、民間の非金融機関の預金が増えるのです。

 ほかに気になることとしては、市中銀行の準備預金残高が変化しないことを上げておきます。民間銀行は、その気になれば、財政支出と同額分まで、発行された国債をいくらでも保有できるということです。

 


4,国債の償還のパターン3つ

 3-1ー1または3-1-2の後で起こることだと意識しつつ進んでください。時系列0に、3-1の結果を示しています。国債は満期までに償還されます。その手順を3パターン見ていきます。

4-1,税金による国債償還

 国債の償還に税金を充てるパターンです。多分、滅多にありませんけど。

図3.1:税金を国債償還にあてる

 税金で国債を返済すると、預金が消失することが示されています。国債発行を伴う財政支出で、民間銀行の貸方と民間企業の借方に新たに発生していた預金が、税金で国債を償還する際に消えているのです。

 国債も償還されて消えています。国債発行を伴う財政支出で、政府の貸方と民間銀行の借方に新たに発生していた国債が、税収分、消えています。

 

4-2,政府による借り換え

 償還期限が来た国債を政府が買い戻し、民間企業は国債と準備預金を交換します。民間銀行は普通、金利が付かない準備預金を、「準備預金制度で定められた量」や「スムーズな決済を行うために必要な量」を超えて余分に多く持つより、利回りがある国債保有したがりますから、借換えは成立します。

図3.2:国債の借換

借り換え前後で特に変化は起こりません。

 

4-3,日銀による国債の買取りと借り換え

 国債は、日銀が民間銀行から買い取って、日銀の手元で償還期限を迎えることもあります。

図3.3.1:日銀による国債の買い取り

 日銀が国債市場で国債を買い集めると、国債の価格が上がり、利回りは下がります。日銀が民間銀行から国債を買い取るというのは、量的緩和と同じ作業だと思います。国債を手放した方が得な状況に追い込むことで、量的緩和を実現したらしいです。詳しいことは知りませんけど。

 国債が日銀に移動しただけ?償還されていない?その通りです。日銀保有国債が満期を迎えたときの処理を見ていきましょう。

図3.3.2:日銀の持つ満期の国債の借換

 税金による国債償還を行わず、新規国債発行と償還期間が来た国債の借換を続けると、国債発行残高は増え続けます。財政破綻論者のエネルギー源です。実際には国債発行残高がいくら増えたところで、何の問題もありません。自国通貨建て国債の発行残高が問題になることは、(日銀がクーデターを起こしたり現状の仕組みを改悪したりしない限りは)あり得ません。償還期限が来たら借換すればいいだけですから。

 

5,税の財源は過去の財政支出である

 上の図でわかるように、準備金の発行・国債の発行・国債の借換は税収とは関係なく行われ、財政支出は銀行の預金や準備金や国債を増やしています。徴税はその逆で、銀行預金を減らしたり、国債を減らしたり、準備預金を減らしたりします。

 財政支出の財源が過去と未来の税金というのは間違いで、実際は、税の財源が過去の財政支出なんですね。直感的にも、世界中から金という金すべてを徴収したら、それ以上税金をとることはできなくなりますよね。無いものは取れないんだから、まずは出さないといけないんですよ。

 

6,愚かなる日銀破綻論への反論(ついで)

 ついでに、日銀破綻論に反論しておきます。そもそも日銀は、債務超過になったとて債務不履行に直結しません。そもそも株式会社(日銀はその中でも立場が特殊ですが)って、債務超過になったら破産しなきゃいけないわけでもないみたいです。債務超過ではなく、必要な支払いを完遂する能力がなくなった時、言い換えれば債務不履行になった時、破産するのです。現状の精度を維持する限り、外貨の支払いはともかく、日本円の支払い能力が枯渇することは有りません。

 

7,政府の債務不履行?なにそれ?おいしいの?

 あとは、政府の債務超過債務不履行(一般向けにマスコミなどで「財政破綻」といわれることが多い)を気にする方がいらっしゃるかもしれませんが、これもナンセンスです。政府は営利団体ではありませんし、法律や憲法や国際条約で利益を上げることを義務付けられているわけでもありません。債務超過債務不履行の間に関係がないのです。何もないところから円を創造できるので、円で債務不履行に陥るわけがありません。

 

8,円を発行しすぎたら信認が落ちてハイパーインフレ?とりあえず落ち着けって

 モノの値段って、高い値段でも買いたい人があふれているときに上がるんですよね。当然なんですけど。お金が増えてもそれだけじゃ物価は上がらないんですよ。日本でも1990~2020の30年間はそうでした。マネーストックが増える一方で物価はほぼ変わりませんでした。

 それでも通貨が増えすぎたらハイパーインフレ、なんて思ってる人は、マンキューの教科書とかフリードマンとかに洗脳されすぎです。必需の輸入品の価格が超高騰したり、大災害や戦争で資本が大規模に破損したりしない限り、言い換えれば商品が圧倒的に不足しない限り、ハイパーインフレにはなりません。大金を支払ってでも買いたいと思わなきゃ、物価が上がるはずがないんです。世の中には金持ちがいて、彼らは消費性向低いので、周囲から金を吸い集めています。金持ちに金が集まると、消費に使われる金額が少なくなって、ある種のインフレ抑制効果を発揮します。それに、通貨流通速度一定の下で通貨の流通量が増えたら、税収も増え、その分通貨の量が減ります。通貨の量が増えた程度では、ハイパーインフレなんて起きないようになっているし、だからこそ実際に、通貨の量が増えた程度ではハイパーインフレにはならないんですね。お金の量が増えてハイパーインフレになるとしたら、それは国民の大半に同じ額を、それもかなりの額を分配した時だけです。原油が上がったり小麦が不足したり水際作戦でサプライチェーンが毀損した、物価が上がりやすいタイミングだったにもかかわらず、コロナの給付の時は、さしてインフレになりませんでした。財政支出の額としても大規模なプロジェクトでしたが。