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アジア通貨危機とは何だったのか。その仕組みと原因を詳しく説明(編集中)

 

 

 

編集中。インドネシアと韓国にも言及せい。ナンバリングも 

 

 

0,記事の自己紹介

 アジア通貨危機の概要や原因を説明してくださる情報は、ネット上にも割とあるけれど、どれを見ても

「もっと細かく説明してよ~」

ヘッジファンドがタイバーツを大量に空売り?なぜヘッジファンドが大量に持ってたの?」

「通貨の価値ってなに?通貨の信用って具体的に何のこと?暴落したからみんな使わなくなりました、なんて聞いたことないぞ?」

通貨危機が波及したとは?どういう意味?どんな因果関係?」

「バブルの原因説明してくれ」

「貸出金利?誰から誰への貸出?」

「タイ国内の市場で貸出金利が高くて、海外の市場から借りてた?なぜタイ国内市場の貸出金利は高かったの?」

「恒常的な経常収支赤字になった理由を説明してほしい」

「わかった気がしてたけど、やっぱりわからん」

などといった感想を抱いてしまった。

 「通貨危機」もギリギリMMTの守備範囲な気がするので、自称MMT論者の私としては、なんとか説明できるようになりたくて、勉強を進めた。その成果をここに記録する。未だに、完全に理解したとは思っていないし、(勉強熱心な人のあるあるネタかもしれないけど、 )半年後に読み返すと恥ずかしくなってしまう予感がする。「ここが違うよ!」とか、「ここがわからん!」とかコメントいただければ、気が向いたときだけ時間ができ次第、読んで返信します。ぜひよろしくお願いします。

 

 

1,アジア通貨危機の自分なりの要約

 アジア通貨危機は、簡潔に分かりやすく説明しようとすると、かえって分かりにくくなる類の問題だと思う。だが、あえてシンプルに説明をすると、多分こんな感じ。

ヘッジファンドなどが為替市場でアジア通貨を売りまくり&米ドル買いまくった。それに対抗し固定為替相場を維持すべく、アジア各国中央銀行は米ドルを売ってアジア通貨を買い続けた。その結果、中央銀行の米ドル準備が枯渇し、固定為替を維持できなくなった。アジア各国は(少なくとも一時的に)変動為替相場制に移行し、通貨安が一気に進んだ。多くのアジア企業は、金利の安さを理由に、投資資金を海外からの融資に依存していたため、アジア通貨安が進んだ影響で債務の返済ができなくなり、多くのアジア企業が債務不履行に陥った。

東南アジアを中心とした数か国で似たような事態に発展した。影響だ伝搬したというよりは、おおむね同じメカニズムで同じ事態に発展し、しかも個別に発生した、という側面が強いようだ。

 自分で書いてても、説明が雑だと思う。しかも、「アジア通貨危機は、グローバリズムの弊害が表出した出来事の一つだった。」と私自身は信じているが、その説明が全くできていない。

 不甲斐ない。仕方がない。ここから詳しく説明していこうではないか。

 

 

2,アジア通貨危機を説明する前に、前程を整理

 ここで、この記事における言葉の使い方とか、前程の知識とか、一応書いておく。自分の言葉の定義が、人によってはクセが強いと感じるであろう。ということが一つ目の理由。もう一つの理由は、通貨危機の説明に避けては通れない為替関連の知識の復習。

 

 

2-1,輸出が増えれば国が豊かになるイメージ、実際どうなん?

 輸出を増やせば外貨を多く手に入れることになる。より多くの外貨を手に入れれば、より多くを輸入できる。国内で生産して消費する自給自足分が変化しなかったと仮定すると、輸入を増やす以前と以後を比べたとき、輸入を増やした以後の国民の生活水準は向上する。より多くの商品・サービスを消費したことになるのだからだ。「輸出産業のおかげで経済成長した」と思っている人の頭の中は大体こんな感じ。

 ここで重要なのは、「輸出が増えたからその国の住民の生活が豊かになった」のではなく、「より多くの商品・サービスを消費したから、その国の住民の生活が豊かになった」ということだ。輸出を増やしたことが生活水準向上の直接の原因ではない。輸出を増やさずとも、国内で商品やサービスのやり取りを増やすことができれば、国民の生活は向上する。GDPは成長する。

 実際、日本の高度経済成長期は、内需依存型だった(輸出金額対GDP比の各国比較より)。日本は輸出産業を成長させたことで経済成長したというよりも、国内の需要を伸ばしたことで経済成長したという方が実態に近い。輸入した資源の価格が高すぎて産業が育たない、などとならない程度に輸出して円高ならば、日本の場合、輸出産業のおかげで経済成長とはならない。

 そもそも、多くを輸出できるということは、多くを生産できるということでもある。「輸出したから豊かになった」ではなく「豊かだから輸出できた」という方が、多くの国では事実に近い。だから、「輸出を増やしたから豊かになった」は正確には間違いだ。正確には間違いだが、正しい場合もある。例えば以下の4つは、輸出を増やして豊かになったパターンだ。

①資源小国かつ自国通貨安すぎて、資源の輸入物価が高すぎる場合。自国通貨安を緩和するために、輸出を増やして為替市場における自国通貨の需要を増やし、自国通貨高を目指すべきかな?

②人口が少なすぎるせいで、規模の経済を利かせるサービス全般を輸入した方が良い場合。シンガポールなど、これに当てはまると思う(主観)。

サウジアラビアみたく自国でサービスを生産せずとも輸入すれば何とかなるくらい、過激な対外依存の資源大国。

④自国の産業やインフラが未熟すぎて、特定の産業しか発達していない場合。モノカルチャー経済。輸入品で生活し、その間に自国の生産力を上げていけられれば、ゆくゆくは輸出に依存せずに成長できるようになるだろう。

 

 

2-2,為替市場について

 使用している通貨が異なる国同士で貿易するとき、両替の必要が出てくる。両替の必要とはなにか?日本企業からアメリカ企業への輸出を例にとると、このようになる。

 日本企業は、アメリカで設備投資するなどの理由がない限り、基本的に収益を日本円で受け取ろうとする。従業員の給料を日本円で払い、税金を日本円で払うからだ。

 一方、アメリカ企業は普通、輸入の支払いを完遂できるほどの日本円を持っていない。

そのため、アメリカ企業が銀行で米ドルを日本円に両替する、あるいは、日本企業が銀行で米ドルを日本円に両替する必要がある。アメリカの銀行は勝手に日本円を発行することができないし、日本の銀行も勝手に米ドルを発行できない。両替に応じて銀行が保有する海外通貨の残高は増減する。十分な海外通貨の残高を維持するために、銀行は為替市場で海外通貨を買うことがあるし、他の理由で売ることもある。

為替市場における2つの通貨の間の交換割合のことを為替レートと呼ぶ。

為替市場では、異なる通貨同士の両替が行われている。日本円と米ドルの交換が行われる場合、日本円を売って米ドルを買う側は、できるだけ少ない日本円で多くの米ドルと交換したがり、米ドルを売って日本円を買う側は、できるだけ少ない米ドルで多くの日本円と交換したがる。そのため、現状の為替レートで日本円を買う人よりも売る人の方が多ければ、日本円は安くなり(1ドル100円から110円に)、現状の為替レートで日本円を売る人よりも買う人の方が多ければ、日本円は高くなる(1ドル100円から90円に)。

 

 

2-3,固定為替相場制・変動為替相場

 変動為替相場制とは、為替レートを成すがままにすること。固定為替相場制では、中央銀行が特定の為替レートを維持するために働く。自国通貨が安くなりそうなときは持っている外貨で自国通貨を買い、自国通貨が高くなりそうなときは自国通貨で外貨を買う。

 

2-4,通貨安・通貨高と、輸出入のバランスについて

 基本的には、輸入する商品・サービスの量が増えると自国通貨安、輸出する商品・サービスの量が増えると自国通貨高になる傾向がある。輸入のときには為替市場で自国通貨を売って相手国の通貨を買い、輸出のときは為替市場で自国の通貨が買われるためだ。

 通貨危機というのは、対外通貨の為替レートが暴落すること。為替レートの暴落って、聞きなれない間は意味が分からない。例えば日本円を例に出すと、日本円が暴落する=急激に円安になる という意味。「それなら暴落なんて言わずに、最初から通貨安になるって言えよ!」って?私もそう思う。

 

2-5,窓口指導・資産バブルへの影響

 今も現役で行われている国があるかどうかは知らないが、少なくともアジア通貨危機の当時、危機に陥った国の中央銀行は、同国の市中銀行に対して、今期はこの分野にこれだけ貸し出して構わない、というような指示を与えていた。窓口指導には、法的な拘束力はないが、慣習的に、みな従っていたとされる。(ちなみに日本でも、窓口指導は行われていた。公式にはバブル崩壊のころまでだったかな?)

 景気の良い国の銀行はたいてい、利息の儲けを大きくするために、ほぼ上限まで貸出したがる。そのため、窓口指導で示された上限まで貸し出すことが、習慣になっていたらしい。

 貸し出されたお金はどこかで使われる。通貨の流通量の増加率が経済成長率を大きく上回る場合、高いインフレ率を示す。(そのため、市中銀行の貸出は、GDPの成長に歩調を合わせつつ規模を拡大するのが望ましい。)

 窓口指導で不動産の分野でもっと貸出を増やしてよいとなると、長らく景気の良い国では上限近くまで貸し出す。日本のバブルの時期や通貨危機に陥る前の時期には、窓口指導でGDP成長率よりも貸し出しの増加率を大きく設定したため、貸し出された金は投資ではなく資産の購入、特に不動産購入へと向かった。こうして、不動産バブルを助長することになる。

 

2-6,インフレ率と固定為替相場

 発展途上国が米ドルで固定為替した場合、名目の為替レートは時間によらず一定だ。ここで、発展途上国のインフレ率が高く、ドルはインフレしなかったと仮定する。すると、貿易で手に入る商品やサービスの量を基準に考えたとき、時間の経過とともに、あたかも途上国通貨高になったかのようになる。発展途上国が高インフレのとき、1ドル分の買い物でも、発展途上国内で買えるものが少なくなっていく。発展途上国から見れば、あたかもドル安になったかのような効果が発揮される。ドル安は、別の言い方をすれば、発展途上国通貨高。(ちなみに、第3国から見れば、ドル安になっているようには見えないはず。発展途上国通貨高は、第3国から見ても発生している。)

 高いインフレ率を継続する発展途上国が、為替相場を維持し続けると、実質、通貨高になったかのような効果をもたらす。すると、輸出が伸びず、輸入物価が下がり、貿易赤字が常態化するようになる。それでも固定為替相場を維持しようとすると、中央銀行の外貨準備はいずれ底をつき、変動為替相場制に移行せざるを得なくなる。移行した途端、一気に途上国通貨安になる。このとき、外貨建て債務を大量に抱えていたとすると、途上国の経済主体にとっては、実質の債務が突然跳ね上がることになる。

 

2-7,公定歩合と貸出金利

 昔の日本では、公定歩合を基準にして、様々な種類の銀行預金の金利を制限していた。そのため、公定歩合を引き上げると市中銀行の貸出金利も高く、公定歩合を引き下げれば市中銀行の貸出金利も低くすることができた。貸出金利が高くなると、企業は借り入れが難しくなるので、景気を冷ます効果がある。貸出金利が低くなると、企業は借入のリスクが低くなるので、(インフレ率が低すぎない限りは)景気を加熱する効果がある。公定歩合はかつての日本で、景気のコントロール手段として用いられていた。

 

 

3,タイの通貨危機

 タイの通貨危機ではいったい何が起こっていたのか、詳しく説明する。時系列Tに従って、3-T-Xという風にナンバリングした。

3-1,危機の原因

3-1ー1,高度経済成長期・短期資本移動の規制緩和

 通貨危機以前のタイは、高い経済成長率を維持していた。タイの中央銀行は固定為替相場の維持を宣言していた。タイでは、法律の規制が緩和され、バンコック国際金融市場(BIBF)が創設された。これにより、タイの企業や銀行は海外から自由に借り入れできるようになった。ちなみに、BIBFの創設は1990年にタイの中央銀行が発案したらしい。

 当時、タイの通貨=バーツの貸出金利は、タイ国外の市場における米ドルの貸出金利よりも高く設定れていた。おそらく、当時のタイでは昔の日本のように、公定歩合を使って民間銀行の貸出金利を調節していたと思われる。仮にそうではなかったとしても、当時のタイの民間銀行の貸出金利アメリカのそれよりも高かったのは確かだ。

 タイの中央銀行が為替維持を宣言していたこともあり、「米ドルで融資を受ける方が支払う利息が少なくて得だ」という発想から、タイの企業は米ドルで融資を受けることが多かった。短期期限の米ドル建て融資が広く行われていた。

 

3-1-2,窓口指導と資産バブル

 タイの中央銀行が民間銀行に貸し出しの増加量を指示する、いわゆる窓口指導で、貸出の増加率は期待される実体経済の成長率より過剰に高く設定された。その結果、金融資産や不動産の分野での貸出しが過剰になり、不動産バブルが発生した。不動産バブルで利益を上げた人が消費を増やしたこともあってか、好景気が続いた。

 

3-1-3,貿易赤字と米ドル準備高の減少

 タイでは不動産バブルと同時に、それまでの米国より高いインフレ率の影響もあって貿易赤字が続いていた(高いインフレ率と固定為替相場を維持していれば、貿易赤字に向かいやすいのは前述した通り)。タイの中央銀行は、固定為替相場を維持するために、貿易赤字の分、為替市場で米ドルを売ってタイバーツを買った。タイの貿易赤字が続いたため、中央銀行の米ドル保有残高が減少し続けた。

 

3-1-4,タイミング悪く、アメリカが「強いドル政策」をとる

 強いドル政策とは、ドル高を目指す政策らしい。具体的な手法は知らん。基軸通貨たるドルが強くなったところで、特にメリットは無い気がするのだが、どうなのだろうか。私の勉強不足かな。

 とにかく、アメリカが強いドル政策をとった。米ドルと固定為替をとるタイバーツも、”強く”なってしまった。これでますます貿易赤字が膨らみ、タイ中央銀行の外貨準備も減る。

 

3-1-5,タイの中央銀行の方針

タイの中央銀行は、対ドル為替レートの維持を公式に宣言していた。一方で、国内の貸出金利アメリカよりも高く設定した。*1

 

3-2,通貨危機発生

3-2-1,ヘッジファンドのバーツ売り、中央銀行の米ドル枯渇、変動為替相場制への移行

 このままではタイの中央銀行の米ドル残高が底をつき、固定為替相場制を維持できなくなると読んだのか、それとも勝算があったのか、欧米のヘッジファンド空売りを仕掛けた。

 欧米ヘッジファンドは最初に、タイバーツ先物の売りの権利を爆買い。「いついつからいついつまでに、バーツをこれこれの割合でドルに交換できる」みたいな権利を爆買いしたのだ。

 次に、欧米ヘッジファンドは、手持ちの現物タイバーツを為替市場で爆売り。

 タイの中央銀行はドル準備残高を消費しつつ、為替市場に大量に売り出されたタイバーツを買い集める。やがて、タイ中央銀行は固定為替相場を維持することができなくなったと判断し、変動為替相場制へ移行した。

 変動為替相場制に移行し、対ドルで急落したバーツを、ヘッジファンドは大量にお買い上げ。あえて雑に言うと、高い時にタイバーツを売って、安い時にタイバーツを買ったということ。固定相場制時代の爆売りと、変動為替相場への移行後の爆買いによって、タイバーツ建てで差額分の利益を上げた。最後に、先物売りの権利を使い、固定相場制の時代のレートで手元のバーツを米ドルに両替。一連の騒動で、ドル建てで利益を上げた。アホほど儲けたに違いない。

 

3-3,通貨危機の症状とIMFの要求による深刻化

3-3-1,タイ企業の債務不履行が続出

 変動為替相場制に移行した直後、為替市場に過剰なタイバーツが供給されていたのでタイバーツは暴落。ここで困ったのは米ドル建てで融資を受けていたタイの企業たち。何せ、実質の返済額が一気に跳ね上がったのだ。特に短期の融資をし過ぎていたのも問題だった。欧米の金融機関や投資家は、タイの企業の返済能力を疑い、新たな借り換えを許さなかった。結局、多くのタイ企業が債務を返済できなくなってしまった。債務不履行祭り。当然、失業率が急上昇し、GDP成長率は一気に落ち込んだ。

 

3-3-2,資産バブルが崩壊、間の悪い人たちは債務返済、信用収縮

 米ドル債務が急に膨れ上がり、返済に追われだしたタイ企業が大量発生。これを引き金に、不動産バブルが崩壊。不動産を売って米ドル債務を返済したのだろう。ところでこの不動産バブル、もともと銀行の融資で不動産を購入していた人が多かったせいで(これぞバブル!)、間の悪かった人達は借金返済にいそしむことになる。銀行は銀行で焦げ付きが大変。民間の非金融部門も銀行も、投資熱が冷めた。不景気に拍車をかけることになる。

 

3-4-1,IMFの介入

 米ドルを手元に欲しくてたまらないタイ企業の様子を見て、タイ政府はIMFから米ドル融資を受けることにした。もともとは、IMFではなく日本に頼ろうとしたらしい。世界有数の米ドル保有残高をもつ日本は、これに応じる案を提案していたが、”ワシントン”とIMFの拒絶にあい、日本発案日本主導の融資支援は実現されなかった。とにかく、タイ政府はIMFに支援、すなわち米ドル融資を求めた。

 IMFはタイ中央銀行に米ドルを融資する条件として、ワシントン・コンセンサスに従う政策を次々と要求した。新古典派万歳!新自由主義万歳!グローバリズム万歳!小さな政府万歳!市場原理主義万歳!多国籍企業至上主義万歳!.......最後のやつは言っちゃダメなやつだったかな?

 IMFからの内政干渉を飲んだタイは、米ドルの融資を受けた。手に入れた米ドルは、タイ企業の米ドル債務の返済にあてられた。欧米の投資家も、焦げ付かずハッピーというもの。

 IMFが毎度の如く要求する融資の条件は、タイの場合にも当てはまる。例えば、政府の財政収支黒字を求めたことや、金融の規制緩和を求めたこと、さらには外国人が土地を購入したり、銀行などの重要な産業を買収できるように、法律の改正を迫ったこと、などがある。

 政府の財政黒字は、その国のGDP成長を強力に妨げるということでもある。これはMMTを知っている者の間では常識。*2

 金融の規制を緩和すると、金融の不安定化を促進することが多い。そもそも、タイの通貨危機も、欧米からの融資に対する規制を緩和したことが、原因の一端を担うというのに。

 

3-4-2,IMFの要求がタイの企業を追い詰めた

 IMFが米ドルを融資する際の条件

・高金利政策*3

・緊縮財政

この二つが、タイ国内の企業を苦しめた。

 海外の銀行や投資家がタイの企業への融資を止めたので、資金繰りに困ったタイの企業は国内の銀行から融資を受けたがった。しかし、残念ながらタイ国内銀行からの貸出金利は高い。銀行は銀行で、不景気な状態で高い金利で貸し付けると、企業が倒産して返済できなくなるものだから、銀行の経営も悪化した。

 緊縮財政で国内需要が小さくなったせいで、タイ企業の多くが仕事を減らした。これもまた不景気に拍車をかけた。

 

 

 

 

 

インドネシアも言及したい

 

5,韓国の通貨危機

かなり雑な言い方をすれば、韓国の通貨危機はタイと同じような事の顛末だった。しかし、通貨危機の引き金となった事象は異なる(3-2-1 の部分が違うと思ってもらえれば、大体合ってる)。タイではヘッジファンドが為替市場で暴れまわったのが引き金となり通貨危機に至ったのに対し、韓国の場合、ウォール街で韓国の悪いうわさが広まり、不安になった銀行が返済の繰り延べを許さなくなったために、多くの韓国企業が倒産した。

他にも違いはある。下に、韓国の場合だけに当てはまることを記す。

IMFは、金利を5%引き上げた場合どれだけの韓国企業が倒産するかを詳細に予測した。予測による倒産件数は莫大だった。IMFはそれを分かったうえで、韓国に5%の金利の引き上げを要求した。

 編集中

 

 

 

6,参考にした資料

この記事を書いたときの主な参考資料を一覧しておく。

まずはYoutube動画のプレイリスト。

www.youtube.com

 

続いて書籍。

bookmeter.com

bookmeter.com

bookmeter.com

bookmeter.com

 

*1:私が読んだ資料に、そのように書いてあった。国内金利を高く設定したとはいったいどのようなことを表すのか、詳しい言及はなかったが、「公定歩合を高く設定し、制度上公定歩合に伴って変化する様々な金利を高くした」という意味だと思われる。

*2:有名なのは、政府支出の伸び率とGDP成長率に強い正の相関関係があるという話だが、そんなものを持ち出さなくても、政府支出がそもそもGDPの一部だとか、政府の支出の多くはインフラ投資に使われるから民間の生産性を上げるとか、そんな風に考えても問題ない。

*3:中央銀行が金融機関に貸し出す際の金利、いわゆる公定歩合を高く設定する政策。私があたった文献では、当時のタイがどのような仕組みを採用していたのか明確な記述がなかった。ただ、「IMF金利の引き上げを迫った」という意味の記述から、昔の日本と似た仕組みが当時のタイでも採用されていて、IMFがタイの中央銀行に高金利政策を迫った結果、個人や企業への貸出の金利も上がった、という意味だと思われる