4月です。なんだかんだで新生活の季節です。気持ちを新たに、今日も生きるわけです。そして、人が人である限り一番大きな関心事になりがちな人間関係について、私自身考えることが多くなっている気がします。今回は理想のチームについて考えます。
理想のチーム。それを、以下の3つの条件に当てはまるチームと定義しましょう。
①チームの存在意義である仕事が高水準であること。
研究者でいえば高評価な論文を数多く輩出するチーム、ビジネスであればより多く稼げるチーム、ボランティア活動だと社会への貢献度が高いチーム。これに異議を唱えるのはよほどの変人でしょう。
②チームのメンバーが、そのチームに所属して活動していることを楽しみ、誇りに思っていること。
これも多くの方に賛同いただけるでしょう。活動が楽しくて喜ぶ人はいても嫌がる人はいないでしょう。自分がチームに所属していることを誇れるなら、それはたいていとても良いことです。
③向上心を持ち続け、自己破壊的な決断をとることができること。
伝統だとしても、既得権益を得る人たちに拒絶されても、今まで通りやっていてもしばらく何とかなるとしても、上の2つの条件を満たすための改革を問答無用で推し進められるということです。お役所仕事の真逆の概念だと思ってもらえれば、大体当たっています。この条件に関しては、私自身の好みなだけかもしれませんね。
それぞれの条件を詳しく見ていきます。
①チームの存在意義である仕事が高水準であること &
②チームのメンバーが、そのチームに所属して活動していることを楽しみ、誇りに思っていること。
もしあなたが金と権力を十分に持っていたとしたら、結果を出せるチームをつくるために何をしますか?パフォーマンスの高いチームを作りたいなら、最高の人材をかき集めて協力するのが良いに違いない!と思いたくなるところかもしれません。ですが、実際にはそう簡単にはいかない可能性があります。最高の人材を集めても、最高のチームになる可能性は実はあまり高くありません。
一体どういうことなのか。スポーツで例えましょう。駅伝や野球のように、チームメンバーの相互作用が比較的少なくて、求められるプレーがはっきりと定まっている場合は、最高の人材を集めるオールスター形式で問題ありません。一方、バスケットボールやバレーボールだと、オールスター形式は必ずしもうまくとは限らないのです。バスケットボールだと、フリースローだけで試合が決まるならオールスター形式が最強でしょうが、パス回しやディフェンスなど、個人の能力よりも、チーム全体が超個体のように調和した動きをすることが重要な場面が多いのです。そして、オールスター形式だと、そのような超個体的な連携が求められる際は上手く機能しない可能性があるのです。
なぜそんな面倒な事態が発生するのか。それを理解するには、まず、進化心理学者のウィリアム・ミューアの実験について触れるのがよさそうです。素晴らしい資料を発見したので、こちらをご覧ください。最初の5分だけ見ていただければ十分です。勿論、興味深いプレゼンですから、最後までご覧になるのもよいでしょう。あなたの自由です。
さて。プレゼンをご覧になった方であれば、「優秀な人材を集めるだけではパフォーマンスの高いチームが出来上がるとは限らない」ことに納得していただけたと思います。では、パフォーマンスが高いチームはそうでないチームと比べて具体的に何が違うのでしょうか。Googleの行った研究が参考になります。
要約すると、
1,もしミスしても、自分が不利な立場になることはないと思えること
2,チームのメンバー同士が信頼しあっていて協力的なこと
3,目標とそれを達成するために取るべき行動や意思決定のプロセスが明確なこと
4,メンバー自身がそのチームに貢献していると感じること
が大事だと。ちなみに、これに関しては、同じようなことを主張する本が、私の知る限りでもいくつもあるんですね。例えば、以下の2冊。
THE CULTURE CODE ―カルチャーコード― 最強チームをつくる方法 感想 ダニエル・コイル - 読書メーター
なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか――すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる 感想 ロバート - 読書メーター
ここまでくれば、理想的なチームとはどんなチームなのか、大体イメージできるようになってきました。
そして、ここまで読んでくださった方であればおそらくお気づきの事実が存在します。「①チームの存在意義である仕事が高水準であること」を達成するためには、「②チームのメンバーが、そのチームに所属して活動していることを楽しみ、誇りに思っていること」が重要だということです。チームの雰囲気が悪いのに結果は出るという場合はレアケースで、結果を出せるチームを作りたければチームの雰囲気を良くすることが有効なのです。
③向上心を持ち続け、自己破壊的な決断をとることができること。
向上心を持ち続けるというのは文字通りの意味です。自己破壊的とは、この記事にでは、これまで積み上げてきた成功をすべて無駄にするような改革であっても、必要ならば行うという姿勢のこととします。
なぜこの項目を理想のチームの条件に挙げたのか。それは、私たちの生きる現代社会が、過去に類を見ない変化の激しい社会であり、この変化の速さが今後さらに加速していくことが目に見えているためです。前提条件が変われば最適解も変わります。そして、時代遅れな前提条件を信じ続けたチームは必ず落ちぶれます。具体例を知りたければ、このどちらかを読むことをお勧めします。言わずと知れた名著でしょう。
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 感想 クレイトン・クリステンセン - 読書メーター
「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明 感想 伊神 満 - 読書メーター
そして、「向上心を持ち、自己破壊的な決断をとることができる組織」は、「向上心を持ち、自己破壊的な決断をとることができる人」によって作られます。そのような人の特徴の中でも重要なのが、好奇心の強さでしょう。好奇心が強い人はたいてい向上心が強くて自己破壊的な行動をとりがちです。
人がより良いものを求めるとき、今まで考えたことのないことを考え、とったことのない行動を試す必要があります。試行錯誤です。そして試行錯誤のモチベーションとして最も強力なのが好奇心です。(決して上司の命令ではありません。上司の命令に頼っていると、言われたことしかやらない部下が出来上がります。言われたことしかやらない部下とそれに命令するばかりの上司の組み合わせで、革新的な仕事を成し遂げた例をあなたは思い付きますか?)
また、好奇心が強い人は、放っておいても新しい情報を仕入れ、新しいアイデアを思いつき、試したがります。(そしてたいてい失敗し、時々成功するのです。)ですから、好奇心の強い人を集めれば勝手に自己破壊的な決断をとる人を集めることになり、同様のチームをつくることにつながります。
理想的なチームをつくるためには、具体的に何をすればいいのか
理想的なチームの定義である3つの条件
①チームの存在意義である仕事が高水準であること。
②チームのメンバーが、そのチームに所属して活動していることを楽しみ、誇りに思っていること。
③向上心を持ち続け、自己破壊的な決断をとることができること。
を満たす理想のチームがどんな文化を持ち、どんな価値観を持つ人で形成されているのかを見てきました。そこで、問題提起です。
理想的なチームをつくるには具体的に何をすればよいのでしょうか。以下にアイデアを書き連ねます。まあ、これぞという内容をどこの誰とも知れないような私が書けるなら、だれ一人苦労していないわけですがね。
・1st step 良質な人間関係
最初は下準備です。人間関係が良好なチームを作ります。
まず、人が好印象を持つ条件をおさらいしましょう。重要なポイントは2つです。(この条件は、心理学の世界では有名らしいですね。私は大学の教養科目の講義で初めて耳にしました)
人物Aが人物Bに好印象を持つ 2つの条件とは
①”BはAの味方であり、Aに対して好意的であり、Aの利益を望んでいる”のだとAが感じること。
②"Bには、Aに貢献できる能力がある"とAが感じること。
この2つは、初対面の相手に好印象を持ってもらうために必要な二大要素であり、カリスマ性の基になる二大要素でもあります。勿論、信頼されるために必要なことです。逆に言えば、これさえ押さえれば基本的に好印象を持たれ、信頼され、カリスマ性を発揮できます。
好意を示すための基本は親切な行動と愛想のよさ、そして上手に話を聞くことです。
貢献できる能力があることを示すためには、能力を身に着けていることと、能力があることを相手に効果的に伝えることの両方が必要です。
重要なのは、上手に話を聴くことができるようになる方法や、自分の能力を相手に効果的に伝える方法ですということになりますね。そのあたりの説明をここに書きたかったのですが、自分の説明能力をはるかに超えてしまうため、情報源だけ紹介します。アウトソーシング万歳!
情報源1
今やこれっぽっちもメンタリストしていないDaiGoさんのニコニコ動画のチャンネルです。
情報源2
上手に話を聴くための1冊です。
プロカウンセラーが教えるはじめての傾聴術 感想 古宮 昇 - 読書メーター
情報源3
有能さを演出するための1冊です。
だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか 感想 ハイディ グラント ハルヴァ―ソン,Heidi Grant - 読書メーター
以上を参考にしつつ、チームメンバー全員がお互いに仲良くなる環境を作り方を考えます。仲良くなる方法は様々です。共通の体験をしたり、一緒にランチしたり、休憩中に自然と人が集まる場所を作ったり。まあ、工夫を凝らします。ところ変われば方法も変わります。試行錯誤です。たいていの試みが失敗に終わるかもしれませんが、何もしなければ何も改善しないことだけは確かです。
・2nd step マインドセットの上書き
向上心あふれるチームを作ります。そのために、自己効力感(努力次第で自分を取り巻く環境は改善できるという感覚)をチームメンバー全員が持っていて、しかも、自分の仕事の意義を感じている状態を目指します。自己効力感と仕事の意義を感じていれば、向上心は後からついてきます。
まず、自己効力感を持つためのヒントになる本を2冊紹介します。
マインドセット「やればできる! 」の研究 感想 キャロル・S・ドゥエック - 読書メーター
やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける 感想 アンジェラ・ダックワース - 読書メーター
次に、仕事の意義を感じる方法ですが、その人の仕事がだれに感謝されているのかを見せてあげる仕組みを導入するのが一番です。感謝は、する人もされる人もいい気分になる素晴らしい方法です。チームの内外を問わず、感謝の声を届ける工夫をするとよいでしょう。
あとがき的な何か
ここを読むのは私を除くときっとあなた一人だけでしょう。すなわち、希少性がとても高い情報だったのです。価値があるのです。
・・・・もちろん冗談ですよぅ。8割ウソに決まってるじゃないですかぁ~・・・・
そうそう。本文では取り上げなかった、チーム作りの参考になりそうな本の紹介を忘れていたのでここで行います。
人のモチベーションを知るための3冊
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか 感想 ロバート・B・チャルディーニ - 読書メーター
PRE-SUASION :影響力と説得のための革命的瞬間 感想 ロバート・チャルディーニ - 読書メーター
影響力の武器 戦略編: 小さな工夫が生み出す大きな効果 感想 スティーブ・J. マーティン,ノア・J. - 読書メーター
”好き”がどのようにして生まれるのかを知るための1冊
ヒットの設計図――ポケモンGOからトランプ現象まで 感想 デレク トンプソン - 読書メーター
チーム作りに不可欠な”Win-Winな関係"とはどんなものなのか、考えましょう。な1冊
GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本) 感想 アダム グラント - 読書メーター
コミュニケーションがどのようにチームの生産性を上げるのか教えてくれる1冊
データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 感想 矢野 和男 - 読書メーター
組織の仕組み、今のままで本当にいいんですか?と問う2冊
[新装版]ピーターの法則――「階層社会学」が暴く会社に無能があふれる理由 感想 ローレンス・J・ピーター,レイモンド・ハル - 読書メーター
ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」 感想 アルバート=ラズロ・バラバシ - 読書メーター ←2019/08/07 追記
スムーズな業務のヒントに1冊
アンチ・サボタージュ・マニュアル 職場防衛篇: 組織を破壊から守る9の戦術 感想 - 読書メーター
今自分が書いてきた記事を読み返してたところ、なんだかものすごく横暴な進め方といった印象を受けました。まだまだ文章が下手糞です。そして考えも浅い。もっとコンパクトにまとめたい。修行するぜ。
とはいえ、自分の考えを整理・発展させるために書いているブログなので、何の問題もないと言えばないのですが。役に立つ情報を自分よりはるかに分かり易く説明する人はこの世に星の数ほどいるので、そこで勝負しても仕方なかろうという負け惜しみを残しつつ。
またいつか。