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GDP成長率と政府支出増加率の相関の解釈について2~~理屈と膏薬はどこにでもくっつく編

データの散布図を眺め、矛盾のないストーリーを考える記事。定量的な要素なしでふわっとしてるし、「そのストーリーっていくつもある可能性の一つでしかないですよね?」って感じなので、あくまでテキトーな推論だってことを了承の上、読み進めるかどうかを判断してください。

 

 

 

 

所得分布の形が時間変化しないという仮定を、共通事項とする。(仮に正規分布で近似できるなら、正規分布で近似できる状態が時間を経ても維持されるということ)

 

GDP成長→税収増加

は、税制が同じなら、理論上間違いないだろう。法人税を除くメインの税制は、GDPが増えるほど税収が増えるような仕組みを採用している。

 

税率を下げた場合、同じ可処分所得の時に同じ貯蓄率を示すと仮定すると、

税率低下→可処分所得増加→GDP成長→税収増加

税率低下→税収低下

の2つの影響が予測され、税率の低下が税収を増やすかどうかは、シンプルには説明できないことが予測される。税率を上げた場合は逆のことが起こる。税率を上げた場合に税収が増加するかどうかは、シンプルには説明できないことが予測される(ただ、消費増税が税収を増やすことは、過去の経験からみて、確実と思って構わないだろう)。

 

貯蓄性向・消費性向については、

貯蓄性向の上昇→消費減少≒GDP減少

貯蓄性向の低下→消費増加≒GDP増加

とみて概ね正しいに違いない(テキトー)。

 

 

中長期の実質GDP成長率と実質税収増加率の相関がさほど強くないのは、税制が変化することと、消費性向が変化するせいだろう。10年もすれば、何かしらの税率が変わることは珍しくないし、可処分所得がある程度増えると貯蓄性向も上がる可能性が高い。可処分所得増加の影響だけでなく、現代では、IT系のサービスが持つコストカットの側面が強く出るので、時間とともに欲求を満たすために必要な支出量が減る傾向も加わる。一方で、不動産系の価格や費用が上がる傾向にあるかもしれない(都市に人が集まると自然と一人当たりの”持ち家に帰属する家賃”的な奴も増える、かもしれない)。とにかく、(これ以降張り出すすべての散布図やヒートマップに言えることだが、)様々な影響が反映されているものとしてなんとなーく眺めるのが妥当な姿勢であろう。

2002と2020の比較。先進国限定

2003から2020。前期比のヒートマップ
先進国限定



 

 

 

短期・長期にかかわらず有効需要の原理を認めるなら、

政府支出増加→GDP増加

はほぼ確実。GDP=民間消費支出+民間投資支出+政府支出(投資支出と消費支出) だから、右辺の変数がすべて独立だということにすると(実際はそんなことない、正の相関が出やすい)、GDPが政府支出の一次関数(右肩上がり)として記述できる。ほかの条件が変化しないなら、GDPと政府支出の正の相関は、短期でも長期でも予測される。

2002と2020の比較。先進国限定

政府支出増加率とGDP成長率の間には、中期では割と強い相関がある。政府支出を増やすと、必然的に家計の所得を増加させる圧力が加わる。政府支出の中に直接家計に振り込むものがあることに加え、企業が政府から仕事を受注し、その企業が従業員に給料を支払うルートもある。とにかく、政府支出増加→家計所得増加→消費増加≒GDP成長 が見込まれる。たいていの場合、政府支出増加率>GDP成長率 である。これは、時間とともに消費性向が下がってきた結果、あるいは、実行税率を上げた結果と推察できる。(脱経済成長論が出てくるのも、消費性向の低下を考えると不思議ではないし、実質所得の格差が拡大していない場合は、脱経済成長論にも一理ある。そもそもGDPという一元的な尺度に頼ること自体、個人的にはどうかと思っている節がある。だったら使うな?確かにw)

一方で、不況時は、不況から抜け出すための緊急措置として、政府支出が増加する傾向もあるので、

民間消費支出減少≒GDP減少→政府支出増加

ということも起こるはずだ。前年比による実質GDP成長率と実質政府支出増加率の相関が弱い一方で、中期による実質GDP成長率と実質政府支出増加率の相関が強いという予測ができ、観測事実はこれに近い。

短期・長期を問わず 政府支出増加→GDP増加

短期では      民間消費支出減少≒GDP減少→政府支出増加

という組み合わせとして解釈することができる。ただ、「政府支出を増やしてきた国はその後も増やし続ける傾向にあることが原因で、短期の増加率の相関が中長期の増加率の相関よりも0に近づく現象」が普遍的に観測されうるので、推論の結果と実測のデータの解釈一致にあまり意味はないとも思う

2003から2020。前期比のヒートマップ
先進国限定

 

 

政府支出増加→家計所得増加→民間最終消費支出増加

は、どの程度かという部分で議論が巻き起こるものの、微力でOKというのであれば、確実に起こることだろう。それも、短期・長期に関係ない。

一方で、不況時=民間最終消費支出が増えないときに政府支出が増えるという効果

民間最終消費支出減少→政府支出増加

が短期で起こることを考えると、

短期では、

政府支出増加→家計所得増加→民間最終消費支出増加

とお互いの効果を打ち消しあって、長期の場合よりも相関が0に近づくことが予測される。実際、前年比の相関は、中期比の相関よりも0に近い。

2003から2020。前期比のヒートマップ。
先進国限定

2002と2020の比較。先進国限定

ただ、政府支出を増やしてきた国はその後も増やし続ける傾向にあることが原因で、短期の増加率の相関が中長期の増加率の相関よりも0に近づく現象は、普遍的に観測されうるので、推論の結果と実測のデータの解釈一致にあまり意味はないとも思う。

 

 

政府支出増加率と税収増加率の関係については、その分布に複雑さが予測される。

まず、中長期に当てはまるであろう傾向として、税収と政府支出に大きな差が出ないように政府支出の規模を決める傾向はあるはず(「共通通貨使用国の財源問題」や「主権通貨国の、基礎的財政収支GDP比がマイナスに大きすぎるのはよくない論」などの影響)だから、中長期において

税収増加→政府支出増加

の因果関係が予測される。

同時に、

税率減少→税収低下

税率減少→民間最終消費支出増加≒GDP増加→税収増加

消費性向上昇→民間最終消費支出増加≒GDP増加→税収増加

も起こりうる。税制が大きく変わらない場合、

GDP増加→税収増加

が支配的だが、税制が大きく変わった場合、

税率低下→税収減少

も大きく影響することが予測される。政府支出増加率と税収増加率には、基本的には正の相関が予測されるが、税制の変化が大きく影響するサンプルに限定すると、その相関が0に向かうはずだ。

2002と2020の比較。先進国限定

 

短期の場合、政府支出の予算の決定とその実行の時間差、支払う義務が生じる税額の決定と確定申告に時間差があることを考えると、前年比の相関には、政府支出増加率と税収増加率の間には相関が出にくいことが予測される。実際そのようだ。

2003から2020。前期比のヒートマップ。先進国限定



不況の場合、補正予算などを通じて政府支出が増加しやすいと同時に税収が減りやすいので、税収増加率が0以下の領域では

民間最終消費支出減少→政府支出増加

民間最終消費支出減少→税収減少

という関係から政府支出増加率と税収増加率に負の相関が出る圧力が予測される。実際それっぽい傾向があるように見えなくもない。

好況の場合、

民間最終消費支出増加→税収増加

と同時に、

政府支出増加→民間最終消費支出増加

の関係も予測される(ここでも有効需要の原理を乱用)。諸々の時間差が影響を小さくしていると思われるが、あえて二つの関係を連結すると

政府支出増加→民間最終消費支出増加→税収増加

となり、政府支出増加率と税収増加率に正の相関が出ることが予測される。実際、それっぽく見えなくもない。

2003から2020。前期比のヒートマップ。先進国限定

 

 

 

最後にもう一度断っておくけど、ここに書いたのはデータと矛盾しないように見えるストーリーの一つであって、説明や証明の類ではない。「この物語はフィクションです」ってやつ。まぁ、本当かもしれないとも思ってるけど、扱ってる現象が複雑すぎて、なんとも。もちろん、上記のストーリーを支持するモデルを作ろうとすれば作れるだろうけど(なんなら作ったことあるけど)、それに価値を見出せるかどうかはちょっとね。