好奇心の横断歩道を創る!

自分の思考をラバーダック・デバッグするためのブログ

メジャーな税金の目的・役割・機能。

 

 

税金へのヘイト記事ではありません

税金には総じて、通貨を流通させるための原動力としての役割があります。無税国家は現実的ではありません。昔のサウジアラビアは無税国家だった?あそこは主要な大企業が国有で、国有の大企業の経常利益が国に納められるシステムだったから、名目上税金ではなかっただけで、事実上税金は存在したんです。無税国家はうまくいかんぞ。

 

日本の中央政府にとって、支出の上限が税収で規定されることはない

この主張は、知識のない人からカルトだと思われそうです。が、事実、日本政府は、税収の金額と関係なく支出することができるし、統合政府*1にとっての国債の発行は足りない財源を補完するための資金調達手段ではありません(ここでは国庫短期証券国債と呼ばない)。現代貨幣理論や金融の実務を注意深く勉強すれば、その辺は理解できるようになります。例えば以下のような疑問に、質問の前提にも言及しつつ、簡単に答えられるようになるはずです。

「政府が税金を財源にして支出しているなら、どうして未だに”財政破綻”しないの?名目金額でみても債務残高対GDP比でみても、ギリシャよりはるかに”借金まみれ”な日本政府が、なぜ財政破綻していないの?むしろなぜギリシャ政府は財政破綻したの?」

「政府が国債を発行して借りた金が、国債を買った人に返ってこない可能性が高いなら、どうして国債を欲しがる金融機関が後を絶たないの?」※この表現は不正確ですが、あえて大衆寄りの言葉を選んだつもりです。

税が歳出の財源ではないことを知ると、特別会計と一般会計をなぜ区別しているのか?という疑問がわくようになります。省庁間の権力闘争とか、庶民のあずかり知らぬところでいろいろあるのかもしれません。それとも省庁の実務の手順や法律や歴史を勉強すればわかるのかな。今後の課題です。

「税は歳出の財源ではない」と「歳出のために税が必要ない」は違う主張ですが、うまく説明できないのでここには書きません。「歳出のためには税が必要だが、税は歳出の財源ではない」のです。ややこしい。

 

各税の性質・意義・役割

ここで書く内容は、「このような目的があって導入されました」という説明ではない。「事実上このような機能があります」という説明に過ぎない。その点に注意していただいて。

累進課税所得税

国家にとって、累進課税所得税は、所得の分配の不平等に対する罰金としての機能を持ちます。「仕事というものは、社会的に価値あるものを生産した人に高い報酬が支払われるとは限らない。生産活動の価値よりもむしろ権力構造によって、報酬は決定するものだ。」という良識を持っている私の解釈です。報酬・所得の比較的平等な分配を実現する圧力としての一面があります。

企業にとって、所得税は、人件費への上乗せであると同時に、仕入れ先の人件費が仕入れ費用に転嫁される場合、生産費用への上乗せになります。

働く個人にとって、所得税は、自分が受け取る賃金・報酬の目減りをもたらします。

企業にとって、所得税は、生産活動に必要な費用の一部です。企業に高い価格交渉能力があれば、商品・製品の価格に所得税分を上乗せするか、もしくは被雇用者の可処分所得を減らす効果があります。

 

年金

累進的とは言い難く、所得税のような機能は見られません。悪名高い人頭税に近いかもしれません。機能的側面に強いて言及すれば、世代間闘争を助長する役割はあるかもしれません。特別会計なんて言ってないで、一般会計に含んでしまったほうが良いのではないか?と思いますが、素人考えなのでなんとも。経済を語るには歴史や法律や行政の実態の知識も必要なのです。私もまだまだ知らないことだらけ。

 

消費税

消費に対する罰金になったり、賃金と企業の利益に対する罰金になったりします。詳しくはこちらに外注

rokabonatttsu.hatenablog.com

下の法人税の説明と、内容が被るところもあったり。

個人事業主にとってはやたらと手間をかけなければならない税金だと思います。景気の波をなだらかにする機能は弱いです。納税のために消費される労働の多さとビルトインスタビライザーとしての機能の弱さからかんがみて、よい税制だとは思いません。

 

法人税

多くの企業は利益目標を達成するために動く性質を持つので、法人税の正味の影響を理解するには、以下のように価格転嫁の影響を考慮する必要があります。(利益目標&価格交渉力→価格設定)

法人税を支払う企業が消費者に対して大きな価格交渉力を持つ場合、法人税は事実上消費者が支払う

法人税を支払う企業が取引先の企業に対して大きな価格交渉力を持つ場合、法人税は事実上取引先の企業が支払う。ここでいう取引先の企業が支払うとは、「下請けの企業が、より安価に売って収益を下げる」「仕入費・材料費の上昇を受け入れる」などといったこと。

法人税を支払う企業の価格交渉力が弱い場合、法人税はその企業が支払う。上記と同様、より安価に売って収益を下げる・従業員の給料をその分下げる・配当を削る・など。

建前上は法人の利益への罰金といった制度ですが、実際にはもっと複雑な影響を及ぼすようです。

経営陣が「今期は税引前当期純利益が思ったより大きくなりそうだなぁ。そうだ、ボーナス増やして法人税の支払い減らしてやろう。そのほうが従業員の士気が上がって、将来も含めて考えれば良い結果をもたらすはずだ。」と判断した場合、人件費増加の圧力にもなりますし、逆に「税引後の純利益と売上が変わらない、変えられないなら、法人税の支払い分、人件費を削ろう」と考えれば、給料に対して下げ圧力になります。現実には、少なくとも実証研究の示唆するところでは、後者、すなわち「税引後の純利益と売上が変わらない、変えられないなら、法人税の支払い分、人件費を削ろう」が一般的のようです。

ビルスタとしての機能の側面はさほど強くはないがさほど弱くもないといった印象です。経済の安定を考えるなら、あってもいいんじゃないか?くらいの感じかと思います。

 

相続税

金持ちに生前相続や消費を促す圧力になるんじゃないでしょうか。

 

揮発油税

ガソリン税とか。資源を大量に使うことへの罰金だと思ってれば、おおむね正しいかと。

 

酒税・たばこ税

個人にとっては、酒やたばこの摂取を制限する働きがあり、企業にとっては、酒やたばこで利益が上がりにくいようにする働きがあります。企業で働く労働者の賃金交渉力次第では、事実上所得への税金として機能することもあるかもしれません。

酒やたばこが蔓延するのはよくない、という思想に利する税金です。

「税金を取るなんてケチなことしないで、全面的に禁止すればいいのに」という気持ちもわからなくはないですが、禁酒法時代にギャングが勢力を伸ばし、機械用のアルコールを飲んで多くの人が亡くなった、アメリカのような例もあります。「酒やたばこを売ってもいいけど税金とるぞ」ってのは、意外と妥当な落としどころなのかもしれません。

*1:統合政府とは政府と中央銀行を一つの経済主体としてとらえるもの。中央銀行の業務抜きでは徴税や歳出やそのほかの業務が滞るし、通貨や金融資産が流通するためには政府の権力が必要なので、事実上、中央銀行と政府は一心同体の存在である。そこで、統合政府という概念を導入してものを考えることがある。